ニワトリとタマゴ 重箱の隅の戦い

重箱の隅をつつくような、どうでもよさそうな細かい話やネタ話。おもいついたら即暴走。

「アイディア」の価値を「技術」で計らないほうがいいと思います

エリア88ごっこ

武器の可能性というのはアイデアだ。性能を満たすのは技術の問題だ。

ずいぶん昔のマンガですが、「エリア88」のサキ・ヴァシュタール中佐の台詞。戦闘機乗りの傭兵達のお話です。その中で、「対空地雷」という代物が出てくるんです。人の手で運べるサイズで、設置すると自律で地中に潜り、そして上空を飛行機が通過するとミサイルを発射するという、まさに対空の地雷です。ただ欠点が多すぎで、高度数百メートルまでしかミサイルが上がらない、敵も味方もお構い無し。イマイチ使いづらそうなので見向きもされず、やがて自然と忘れられたとさ。時が経ち、こんなトンデモ兵器がかつて存在したことを知ったサキ中佐が、対空地雷をこう評価した訳です。
これはミサイルの例ですけど、言葉の意味としては、物づくり全てに通じるものであると思っています。開発も料理も。でも盛り付けだけは無理そうです。だれか助けて。

 

技術ありきで発想を縛ると、面白い物が作れない

学生の頃に読んだパソコン雑誌で、ノートPCに対するお年寄りの投稿がありました。


「キーボードも液晶も丸めて筒に出来れば便利なのに」


当時の自分は、「できるわけないじゃん、液晶も基板も知らなさすぎだわこれ」と、バカにしながら読んでました。でも、本当のバカは僕なんですね。だって、もしも本当に丸められるノートPCあったら、すごい便利じゃないですか。タブレットより大きい画面でネット見て、使い終わったら丸めて引き出しなり鞄に詰めておけばいい。実際、丸められるキーボードはすでに安価に売ってますし、有機ELで丸められるディスプレイも存在します。丸めるPCとまでは、まだいかないですが。当時の僕みたいに「出来るわけない」で一蹴せず、こういう発想を拾って、「アイディア」を実現するための「技術」を研鑽した結果、近いものができてる訳ですね。紙みたいに使える液晶パネル。
iPodやiPhoneも、開発時に「これ以上小さく軽くするのは無理だ」というエンジニアの主張をジョブズは突っぱねました。でも、あのサイズや重量でなければ、ここまでヒットしなかったでしょうね。技術力を枷にしていたら、まったく商品価値の無い物になったでしょう。・・・現場はまあ、ほんとに大変ですが。自分も無茶なサイズの基板作った苦い思い出が(笑) 

 

技術的に無理そうでも、「もし実現できたら?」を考えてみる

絶対登れなさそうな技術な壁でも、その先に財宝があるならば、登り続ける価値があるものです。産業革命にも繋がった蒸気機関とか。西暦100年にもならない頃から、蒸気が使えそうだ!というアイディアはあったけど、やっとこさ形になり始めたは1600年代になってから。気の遠くなる話です。それでも、「蒸気が生み出す巨大なエネルギーで何ができる?」を考えれば、壁を登り続けるモチベも上がるというものです。第二次大戦中のUボートも、そんなん無理だろ!と欧米が考えてた中、実現したドイツはえらい戦果あげました。大戦中にジェット機まで作っちゃったしね。
料理もそうですね。こんにゃく芋の食べ方とかよく考えたものだと。技術の壁を乗り越えた結果、様々な物が生まれてます。

 

「不可能」を「可能」にするのが技術力であるべき

結局、「こんなこといいな、できたらいいな」という旧ドラえもん的フレーズが全ての源かと思います。できるできないは、最初は考えないのが良いです。アイディアがなければ不可能も可能もありませんから。いいアイディアがあれば、あとは苦しむのは現場です。エー、ヤダー!でも技術は鍛えも学べもできますけど、アイディアは・・ねぇ。難しいです。

3DCGはPC環境の進化にあわせて技術が拡張されたり、斬新なアイディアが出たりで面白いですね。そんなに詳しくは無いですが。

 

3DCGにおける「発想」の例

ちょっと面白い例を。下の画像は3DCGの「法線マッピング」という技術です。ゲーム等で、とっても緻密な3Dモデルを動かすと、とんでもない性能のハードが必要です。無理くさいです。そこで立体的に見える「トリックアート」的なことをする発想が生まれました。いくら3Dとはいえ、見るときはディスプレイ通して平面で見ます。常に「トリックアート」してやろうというアイディアです。

ノーマルマップ

左が厳密に作った3Dモデルです。細かいです。
真ん中の作りかけの木彫りみたいな、平面だらけの簡単モデル。何かよくわかりません。が、ここにトリックアート的に左を真似て絵を描くと、右のようになります。ほとんど左のと見分けつかないですよね?でもベースになっているのは簡単な形です。
真ん中の簡単モデルだと、三角形の平面で全体が構成されているのが分ると思います。これは三角形500個で作られてます。(裏や下もありますので)一方、左のモデルは400万個です。ゲームや動画で動かすなら、500個の三角で計算するのと、400万個で計算するの、どっちが楽か?。500個で計算してトリックアート描く方が圧倒的に楽ちんです。昔、「ファイナルファンタジー12は10の半分以下のポリゴン数だけど綺麗」って話のタネも、これだったりします。

 

そしてニワトリとタマゴで眠れない

こんな感じで、アイディアを実現する技術と共に、新しい「技術」を実現するための「アイディア」も生まれる訳です。ニワトリとタマゴの関係が始まります。また気になって眠れなくなります。この技術の元を辿ると何なんだ!?って。

ありがとうございました。

 

引用元オリジナル画像
http://commons.wikimedia.org/wiki/File

Example of normal mapping for recreating the details lost during a drastic simplification
Author: Paolo Cignoni

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