突然ですが、「掛け布団」に「稲荷寿司」。
これ何て発音します?
僕は「かけぶとん」に「いなりずし」と発音してます。
けれどもテレビを見てると、「かけふとん」、「いなりすし」といった発音を耳にします。そう、濁らないんです。
気象情報コーナーでも「はださむい」という言葉が。最近はあまり「はだざむい」という表現を聞かなくなったような気も。「濁点は音が汚い」という風潮?それとも気付かなかっただけで昔から??はたまた濁らないのが正しい???
重箱の隅精神を刺激されます(謎)
そんな訳で、ちょっと調べてみました。
日本語における連濁
wikipediaによると定義は次の通り。
複合語において、後部要素の語頭子音が カ行、サ行、タ行、ハ行 である場合(訓令式ローマ字だと、k, s, t, h で始まる場合)、それぞれ次のように変化する。
カ行→ガ行 (/k/ →/g/): てがみ
サ行→ザ行 (/s/ →/z/, /ɕ/→/(d)ʑ/): まきずし, もりじお(盛塩)
タ行→ダ行 (/t/ →/d/, /ʨ/→/(d)ʑ/, /ts/ →/(d)z/): やまでら, はなぢ, みかづき
ハ行→バ行 (/h/, /ç/, /ɸ/ →/b/): きりばな, ひとびと, しあわせぶとり
例外や別の法則もありますが、基本はこのパターンのようです。
これに従うなら、
「かけ」+「ふとん」:ハ行がバ行になり「かけぶとん」
「いなり」+ 「すし」:サ行がザ行になり「いなりずし」
「はだ」 + 「さむい」:同上で「はだざむい」
になりそうです。やっぱり濁って正しいんじゃない!などと思っていると・・・
何事にも例外はつきもので。
「はだ」 + 「さむい」にはこの法則が適用されないようです。
広辞苑による言葉の定義
この連濁が正しいのか、電子辞書の広辞苑を見てみました。
かけーぶとん【掛蒲団・掛布団】
寝る時に、上にかける蒲団。かけぶすま。
「かけぶとん」で正しいようです。濁ってます。が、送り仮名不要。更に「蒲団」という漢字があるとは・・・知りませんでしたぬ。
いなりーずし【稲荷鮨】
甘煮の油揚げの中に、すし飯をつめた料理。すし飯に牛蒡・人参などを刻んで煮たものや炒った麻の実をまぜたものもある。しのだずし。きつねずし。
こちらも「いなりずし」でOK。しかし衝撃の事実が。
「稲荷寿司」じゃなくて「稲荷鮨」なんですね!
かつて寿司屋でバイトしてた癖に知らなかったです(爆)
字面の都合もあるでしょうし、お店によって表記が違いそうな気もします!超いい訳。
「しのだずし」という名称も知りませんでした・・・辞書って勉強になります。
はだーさむ・い【肌寒い】
肌に少し寒く感じる。
お!?
なんと、「はだざむい」という言葉は無いようです。日常的に使っていたものの、「はださむい」が正解。NHKが正しかったようです、さすが日本秘密結社・・・すいません僕が間違ってました。でも「おおむね平常通り」だけはやめてください、不正確な情報とか訳に立ちません。そのうち「津波の心配はおおむねありません」とか「原発の異常はおおむねありません」とか始まったりして(汗)怖すぎです。
違うことを持ち出して正当化する民主党的いい訳は置いときまして。
最初の連濁の法則とは違ってますね?
様々な連濁の法則
九州国際大学のレポートpdfがありました。連濁って研究テーマになる位に複雑なのですね。僕のようなにわかが知ったかぶっても仕方ないので、素人目線で「なるほど!」と思ったことだけ書いてみます。
複合語の第二要素が濁音を含む場合連濁しない。
アイカギ(合い鍵) カミカゼ(神風) カミクズ(紙くず)
たしかに「あいがぎ」「かみがぜ」「かみぐず」にはならないですね。
動詞と動詞の複合語は連濁しない。
オイカケル(追いかける) キキコム(聞き込む) ツレコム(連れ込む)
「きがえる」って「着る」と「替える」の複合じゃないの?と思って広辞苑を見ると・・・これまた衝撃の事実。
きーか・える【着替える】
(キガエルとも)
着ている着物を脱いで、別の着物を着る。
なんと、「きかえる」が正解のようです。見事法則に一致。
いよいよ「はださむい」の出番。長いので一部抜粋。
第二要素に選択制限があるため連濁を起さない例である。
「~煙」:潮煙 砂煙 血煙 土煙 火煙 水煙 湯煙 夕煙 雪煙 馬煙
「~寒い」: うす寒い うそ寒い 肌寒い 薄ら寒い
「煙」や「寒い」といったユニークな意味を指す名詞や形容詞が指定されてることで「制限」があるという意味でしょうか。
なるほど、たしかに「すなげむり」とは言わないです。濁りませんね。
方言としての「ケブリ(煙)」や「サブイ(寒い)」の場合だと、「濁点を含む場合連濁しない」の法則に則り連濁しないのでそれが拡大された、との記述もありました。方言はよく知らないですが、「はださぶい」はあっても「はだざぶい」は無いような気が?(あったらすいません)。
よって法則に則り「はださむい」が正解になるようです。「はだざむい」は口語というより、むしろ間違いですかね。
「~くさい」は 、「かびくさい」「どろくさい」のように基本連濁しないものの、「なまぐさい」は例外的に連濁するとの記述も。たしかにそうですね、改めて見つめると日本語って複雑です。
言葉のイメージ
布団メーカのCMナレーションで「かけぶとん」と発音したら、「かけふとん」にするよう直された、という話を聞きました。メーカサイドで「ぶとん」という音がNGなんでしょう。布団メーカならではの拘りかもしれませんが、業界用語っぽくて釈然としない気も。昔の製鉄会社が「金を失う」という「金失」の字を嫌って「金矢」としたみたいな?あくまで推測ですが。
でも「かっぱ寿司」は「かっぱずし」ですね。
そういう所から来てるかは判りませんが、「いなりすし」のように連濁を嫌う発音が徐々に増えてるような気もします。言葉の伝染?何かで「さつきはれ」も聞いたことありますが、これも広辞苑見る限りNG。
まとめ
- 「はだざむい」は間違いで、「はださむい」が正しい。
- 「かけぶとん」、「いなりずし」は連濁が正しい。
- 実は「きがえる」ではなくて「きかえる」。
- 連濁の法則の分類は非常に難しい。
- 業種や人によって連濁を嫌う向きもある(日本語としては間違い)。
言葉は伝達が第一な以上、正否は別として時代と共にアップデートされていくんでしょうね。いつか連濁が無くなる日も来るかもしれません。
おおすもうで
「危険ですのでざふとんを投げないでください!」
なんてアナウンスがやってくるかも?(笑)
ありがとうございました。
(20151125)ちょっと追記。
Weblioの大辞林だと、
はだ さむ・い【肌寒い・膚寒い】
〔「はだざむい」とも〕
となってますね。とはいえ「はだざむい」で検索してもヒットしないことから(「きがえる」はヒットする)、正式には認めてはいないものの、現代に浸透しつつある的な解釈でしょうか。
公的な出版物でない以上、辞書一冊でFA出すのは危ないですね・・・すいません。
・・・「すいません」も、正しくは「すみません」ですよね(汗)
すいません
「すみません」の転。
これも広辞苑には定義されてないですが大辞林だと有り。日本語としてアップデートが適用された言葉として、認知するかしないかの解釈の差ですかね。